京都へ近づいたころから 雨が降り出した。
新幹線で大阪へ出、難波から南海電鉄で高野山へ。
今から交通費に使うのはつらいけれど、
慣れないうちは、慎重なルートを取ったほうがよさそうだ。
高野山へ寄るにはかなり迷った。
ずっと行って見たかったのだが、何しろお金のことが心配。
しかし、後で悔やむのはバカバカしい。
「のたれ死んだら それまでよ!」
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難波から高野山への2時間は、退屈しないですんだ。
耳慣れない関西弁も、何でもかんでもめずらしい。
「せいもん払い」と言う看板に首をひねり、
「指をつめないように」というドアの注意書きに笑った。
何より前に座った女の子が目を楽しませてくれた。
年は私より1つか2つ下だろう。
大きなうるんだ瞳、広い額、鼻筋が長く、少ししゃくれたあご、
唇は薄めだがいい形。
美人と言うのではないが、みやびた感じで、平安文学の中から出てきたよう。
それが赤い ピカピカした長靴で電車に乗っていると、
何だか素敵で、ちぐはぐな気分にさせられて 愉快なのだ。
見られているのを気にする風でもないのをいいことに、
カメラのファインダー越しに
後の景色と絵になるなと思いながらと、ずっと覗いていた。
とうとう降りていった。
そして、ホームから窓越しに、ちらりと侮蔑のまなざしを送って寄越した。
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「君峠」「御幸辻」「学文路かむろ」 とゆかしい駅名を過ぎ、
ケーブルに乗り換えて 極楽橋、バスで千手院前まで。
宿坊の案内所で聞くと、
遍照尊院ではユースホステルもやっていると言うので、
そこに泊まることに決める。
夕食、朝食付きで650円。
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ユースに荷物を預けて、奥の院まで歩いていく。3kmくらい。
鬱蒼とした杉木立が続き、戦国大名などの墓がある。
一人旅は写真に困る。通りがかりの人に、撮ってもらう。
燈籠堂では、沢山の燈籠が棚の上に並べられている。
燈籠の中の灯は、集めればかなりの明るさになるだろうと思うのだが
一つ一つ限られた空間に閉じ込められているせいで、堂内は暗い。
点在する黄色い光の後の闇が、
そのまま異次元につながっているような気がして来る。
戻りかけたら、二人連れの女のお遍路さんに会う。
足ごしらえまで白装束。
ユースは、男女二人ずつで、他に団体の人が泊まっている。
会う人は、たいてい 「どちらから?学生?お一人?」 と聞いてくる。
みんな取調べのようで、同じで面白い。
お風呂は広くて気持ちよかった。
夕食はもちろん精進料理。
今日はこれでおしまい。
土砂降りの雨になった。
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