46 あとがき          

 

12月2日、高松から宇高連絡船で宇部へ。

宇部から岡山、姫路、京都と回って北陸線で家へ戻ったのだけれど、

途中の記憶が全くない。

お正月を過ごし、再び東京へ戻るまでもしかり。

 

上京し、新宿駅の人ごみの中に立った時、

突き飛ばされそうになりながら、人間を見るのが珍しくて面白くて、仕方がなかった。

動物園で、見たこともない動物を眺めているようだった。

自分とは全く違う種類の生き物が歩いていると思った。

不思議な感覚だった。

 

全く人との接触がなかったわけでもなく、

たった45日くらいの旅だったのに、

自分がいかに社会から離れたところにあったかを、改めて思い知った。

 

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書き残しておくことの凄さも再認識した。

すっかり忘れていたのに、読み返した途端に、

まるで昨日のことのように記憶の中から立ち上がってくる。

そのときの感情までが生々しく思い出される。

 

反対に書き留めておかなかったことは、

なかったことになってしまった。

 

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遍路から20年たって、ワープロで日記を打ちなおしたとき、

あとがきの中に上述のことが書かれてているが、

さらに13年たって、改めて読み返して、

別のことにも気づいた。

 

四国を歩いて回ったと思っていたが、それは大きな思い過ごしで、

やたらと乗り物を利用し、また車のお接待も受けている。

 

車に限らず、さまざまな接待を受け、四国の人達に守られて この旅があったことが良く分かる。

 

人々の過分な親切は、ひとえに私が若かったからだろう。

遍路姿の若い女性の一人旅は、やはり人目を引いたのだと思う。

 

60過ぎて再び遍路に出たところで、あれほどの親切は期待できないに違いない。

年配者が受ける以上の心配りを受けたのだと思う。

 

にもかかわらず、我がままいっぱいの気分は、しおらしいところもあるとはいえ、

恥ずかしい限り。

 

 

 

ホームページに仕立てるにあたり、

よほどさしさわりがない限り、文章はほとんどもとのまま。

右側の青い欄に、今回の感想を付け加えてみた。

 

製作途中で、ネットであちこちの四国八十八ヶ所のページを見て、

その変りように驚いたりするところもあったが、旅している人たちの気持ちは今も昔もおんなじ。

 

現在の情報としての価値はないけれど、

見てくださった方が、四国遍路の様子を楽しんでもらえたらうれしい。

 

再び最新のシニア遍路日記を作れるように、頭も体も 精進!精進!

 

終了