26 青年団長・槌間さん・私  11/12 快晴   歩いた距離:31.5キロ

 

7時45分若松屋を出る。

私は山越えして国道へ、槌間さんは普通に国道へ。

 

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宿毛を出てしばらくしたら、かっこいい車が止まり、乗りませんかと言う。

 

始めは何を言っているのか分からなかったが、

要するにさっきから私に声をかけようと、行ったり来たりしていたらしい。

ちっとも気がつかなかった。

 

乗る乗らないで、なんだかんだの挙句、

とにかく私と話がしたいというので、

それでは5キロくらい乗せてくださいと言ってみた。

5キロなら、一緒に歩くと言う。

 

昨日木枯らし紋次郎の劇をしたとかで、へんろ傘を持っている。それをかぶって歩くと言う。

どうしたものかと思ったが、車に乗るよりもいいしと、思って一緒に歩く。

 

若い子と思ったが、私よりひとつ下。

足摺まで行く予定だったとのこと。

私のリュックをかついでくれると言う。

 

はなしの様子では、津島町の青年団の団長さんらしい。

みんなから、支持を得られなかったり、

上層部とうまくいかなかったりで、悩んでいるみたい。

 

深い事情は知る由もないが、なんとなく子供っぽいなと感じる。

偉そうなことは言えない、私も他の人から見れば、充分子供っぽい。

 

プレイボーイの噂を立てられているが、ほんとはそうではないとか・・・

つまりは自分に自信がもてなくて弱気になっているのね。

 

思ったことは思い切ってやった方がいいとか私も言ってみる。

 

歩くのが遅くて、すこしイライラ。

とうとうこんな具合で、城辺の町まで、15キロくらいも一緒に歩いた。

 

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41番観自在寺着3時30分。寺へ着いたら、槌間さんが座って本を読んでいた。

 

 

宿は二人とも門前の鶴の屋にとる。

鶴の屋では、町内運動会の慰労会があるとかで、8時ごろまで賑やか。

おもしろい宿のおばさんで、宴会場から色々持って来ては差し入れてくれる。

 

槌間さんは子供を扱うのがうまい。

子供と付き合う時は、その子の一番興味を持っていることを探り出し、

その話をすれば、後はどんどん乗ってくるとのこと。

子供と同じくらいまで、精神年齢を下げるのだと言う。

私にはそこまで落とすのはプライドが許さないだろうと言う。

私はどんな風に見られているのだろう。

 

手帳に何を書いているのだろう。

昨日の話になり、槌間さんは、若松屋のおじさんには余り好感をもっていないようだった。

ゆうべ色々話しての結果らしい。

私もちょっと戸惑うところがあったが、何を話したのだろう。

人は、一面から見ただけでは分からないと言う。

 

宿の子供に好きな女の人は?と聞かれて、

そんな人がありそうなことを言って笑っていたが、

あんな風に頭が切れて、ハンサムなら、女の人がほっておかないだろう。

付き合っている人のいない方がおかしい。

 

 

 

面白い人と一緒になった。

四国遍路の思い出として一生記憶に残るだろう。

めぐりあわせに、感謝しなければ。

 

でも彼は私と一緒になって、迷惑してるんじゃないかな。

TさんやYさんみたいだったら、彼も楽しいだろうに。申し訳ないと思う。

 

槌間さんは明日又ぶっ飛ばして先へ進むだろうから、

一緒になるのは今夜限りかもしれない。

道後でゆっくりするようだからそこで追いつくかもしれない。

はっきりした先の日程を聞きたい気もするが、まあ、運にまかせよう。

 

やれやれ、私は肝心なところへ来ると、

何時も最後の決定を他人や時間に任せてしまう傾向がある。

まあ、これでいいやと投げやりになってしまう。

 

これからもかかわりを持っていきたい人との出会いだったのに、

そのチャンスを自分の手でをつかもうとしないのは、やはり勇気がないせいかな。

 

四国へ来て、自分のことを見つめようと思ったが、

だんだん自分が分からなくなってきた。

無になっていくような気がする。

 

 

今日は初めて冬を見た朝だった。明日は、岩松まで行って見よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悩み相談 

団員の前では、強がっていなくてはいけないだろうし、関係のない私と話して少しは気が晴れたかしら。

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、車は路肩に置きっぱなしだし、

また彼は15キロ歩いて戻ったの?

 

後に愛媛県の標識が見えるから、ちょうど県境のあたりか。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一期一会

 

この言葉が出るたびに、槌間さんのことが思い出される。