7時45分若松屋を出る。
私は山越えして国道へ、槌間さんは普通に国道へ。
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宿毛を出てしばらくしたら、かっこいい車が止まり、乗りませんかと言う。
始めは何を言っているのか分からなかったが、
要するにさっきから私に声をかけようと、行ったり来たりしていたらしい。
ちっとも気がつかなかった。
乗る乗らないで、なんだかんだの挙句、
とにかく私と話がしたいというので、
それでは5キロくらい乗せてくださいと言ってみた。
5キロなら、一緒に歩くと言う。
昨日木枯らし紋次郎の劇をしたとかで、へんろ傘を持っている。それをかぶって歩くと言う。
どうしたものかと思ったが、車に乗るよりもいいしと、思って一緒に歩く。
若い子と思ったが、私よりひとつ下。
足摺まで行く予定だったとのこと。
私のリュックをかついでくれると言う。
はなしの様子では、津島町の青年団の団長さんらしい。
みんなから、支持を得られなかったり、
上層部とうまくいかなかったりで、悩んでいるみたい。
深い事情は知る由もないが、なんとなく子供っぽいなと感じる。
偉そうなことは言えない、私も他の人から見れば、充分子供っぽい。
プレイボーイの噂を立てられているが、ほんとはそうではないとか・・・
つまりは自分に自信がもてなくて弱気になっているのね。
思ったことは思い切ってやった方がいいとか私も言ってみる。
歩くのが遅くて、すこしイライラ。
とうとうこんな具合で、城辺の町まで、15キロくらいも一緒に歩いた。
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41番観自在寺着3時30分。寺へ着いたら、槌間さんが座って本を読んでいた。
宿は二人とも門前の鶴の屋にとる。
鶴の屋では、町内運動会の慰労会があるとかで、8時ごろまで賑やか。
おもしろい宿のおばさんで、宴会場から色々持って来ては差し入れてくれる。
槌間さんは子供を扱うのがうまい。
子供と付き合う時は、その子の一番興味を持っていることを探り出し、
その話をすれば、後はどんどん乗ってくるとのこと。
子供と同じくらいまで、精神年齢を下げるのだと言う。
私にはそこまで落とすのはプライドが許さないだろうと言う。
私はどんな風に見られているのだろう。
手帳に何を書いているのだろう。
昨日の話になり、槌間さんは、若松屋のおじさんには余り好感をもっていないようだった。
ゆうべ色々話しての結果らしい。
私もちょっと戸惑うところがあったが、何を話したのだろう。
人は、一面から見ただけでは分からないと言う。
宿の子供に好きな女の人は?と聞かれて、
そんな人がありそうなことを言って笑っていたが、
あんな風に頭が切れて、ハンサムなら、女の人がほっておかないだろう。
付き合っている人のいない方がおかしい。
面白い人と一緒になった。
四国遍路の思い出として一生記憶に残るだろう。
めぐりあわせに、感謝しなければ。
でも彼は私と一緒になって、迷惑してるんじゃないかな。
TさんやYさんみたいだったら、彼も楽しいだろうに。申し訳ないと思う。
槌間さんは明日又ぶっ飛ばして先へ進むだろうから、
一緒になるのは今夜限りかもしれない。
道後でゆっくりするようだからそこで追いつくかもしれない。
はっきりした先の日程を聞きたい気もするが、まあ、運にまかせよう。
やれやれ、私は肝心なところへ来ると、
何時も最後の決定を他人や時間に任せてしまう傾向がある。
まあ、これでいいやと投げやりになってしまう。
これからもかかわりを持っていきたい人との出会いだったのに、
そのチャンスを自分の手でをつかもうとしないのは、やはり勇気がないせいかな。
四国へ来て、自分のことを見つめようと思ったが、
だんだん自分が分からなくなってきた。
無になっていくような気がする。
今日は初めて冬を見た朝だった。明日は、岩松まで行って見よう。
悩み相談 |
団員の前では、強がっていなくてはいけないだろうし、関係のない私と話して少しは気が晴れたかしら。
それにしても、車は路肩に置きっぱなしだし、 また彼は15キロ歩いて戻ったの?
後に愛媛県の標識が見えるから、ちょうど県境のあたりか。
一期一会
この言葉が出るたびに、槌間さんのことが思い出される。
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